【双極性感情障害への薬物療法】モーズレイ処方ガイドラインと国内ガイドラインの違い【比較】

うつ/双極性感情障害

双極性感情障害のガイドライン比較

双極性感情障害の治療において、薬物療法は重要な役割を担っています。私たち精神科医はガイドラインに沿った治療を心がけていますが、双極性感情障害のガイドラインとしては、国内のガイドラインやモーズレイの処方ガイドラインなどがあります。そこで、この2つのガイドラインの比較検討を行ってみたいと思います。なお、モーズレイの処方ガイドラインにおいては、NICEガイドラインやBAPガイドライン、個々の引用文献なども参考に治療戦略が検討されていることを知っておきましょう。

躁病エピソード

国内ガイドライン

ポイント■第一選択
・躁状態が中等度以上:
  リチウム+非定型抗精神病薬(*)の併用
  * オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、リスペリドン
・躁状態が軽度:リチウム単剤

■第二選択
・バルプロ酸
・非定型抗精神病薬
  オランザピン、アリピプラゾール
  クエチアピン、リスペリドン
  パリペリドン、アセナピン
・カルバマゼピン
・バルプロ酸と非定型抗精神病薬

■その他の推奨される治療
・気分安定薬の2剤以上の併用
・気分安定薬と定型抗精神病薬
・ECT(電気けいれん療法)

■推奨されない治療
・ラモトリギン
・トピラマート
・ベラパミル

▶︎国内の双極性感情障害ガイドライン(2020年改訂)はこちら

モーズレイガイドライン

躁病エピソードの第一選択として、抗精神病薬、気分安定薬いずれも推奨されています。ただし、それらの優先順位については明記されていません。その理由として、直接比較したデータが少なく薬剤選択が難しいこと、ある薬剤が他の薬剤よりも有効と推奨することができないことが挙げられています。なお、複数治療法のメタ解析により間接的な比較は可能ですが、オランザピン、リスペリドン、ハロペリドール、クエチアピンは有効性と忍容性のバランスが良いことが示唆されています。気分安定薬については、気分安定薬治療時に再燃した場合に抗精神病薬を追加すれば有効であることが確認されていますが、未治療の場合については不明とされています。なお、場合によっては抗不安薬の短期使用も推奨されています。

ポイント■抗精神病薬
症状が重度または不穏を認めるときに選択
・アリピプラゾール:15〜30mg
・オランザピン:10〜20mg
・クエチアピン:100〜800mg(即放剤)
・アセナピン:10〜20mg
・リスペリドン:2〜6mg

■バルプロ酸
・妊娠可能な女性は避ける
・血中濃度125mg/Lを目指す

■リチウム
・アドヒアランスが良好の場合のみ
・血中濃度1.0-1.2mmol/Lを目指す
 (急性期を超えれば用量調整を)

うつ病エピソード

国内ガイドライン

ポイント■第一選択
・リチウム
・クエチアピン
・オランザピン
・ルラシドン
・ラモトリギン

■その他の推奨される治療
・リチウムとラモトリギンの併用
・リチウムとバルプロ酸またはルラシドンの併用
・ECT(電気けいれん療法)

■推奨されない治療
・抗うつ薬単剤での治療
・三環系抗うつ薬

モーズレイガイドライン

ポイント・fluoxetine単剤
・fluoxetineとオランザピン
・fluoxetineとクエチアピン
NICEのガイドラインでは上記の治療を第一選択として推奨しています。

・ルラシドン
BAPガイドラインではルラシドンが第一選択として推奨されています。

・ラモトリギン
BAPガイドラインでは第一選択とされていますが、モーズレイでは第二選択と記載されています。その理由として、BAPガイドラインでは抗精神病薬や気分安定薬との併用が必要との警告がなされているからのようです。

維持療法

国内ガイドライン

ポイント■第一選択
・リチウム

■第二選択
・ラモトリギン
・オランザピン
・クエチアピン
・リチウムとクエチアピンの併用
・バルプロ酸とクエチアピンの併用
・リチウムとラモトリギンの併用
・アリピプラゾール
・リチウムとアリピプラゾールの併用
・パリペリドン
・リチウムとバルプロ酸の併用
・バルプロ酸

■その他の推奨される治療
・カルバマゼピン
・ルラシドン
・リチウムとルラシドンの併用
・バルプロ酸とルラシドンの併用
・リスペリドン持効性注射
・上記以外の気分安定薬どうしの併用
・上記以外の気分安定薬と非定型抗精神病薬の併用
・リチウムと甲状腺ホルモン剤の併用(甲状腺機能低下や急速交代型の場合)
・不眠があれば上記治療に対するラメルテオン付加

■推奨されない
・抗うつ薬単剤での治療
・三環系抗うつ薬

モーズレイガイドライン

ポイント■第一選択
・リチウム

■第二選択
・バルプロ酸
・オランザピン
・クエチアピン
・アリピプラゾール
・リスペリドン

■第三選択
・急性エピソードで有効であった他の抗精神病薬
・カルバマゼピン
・ルラシドン
・ラモトリギン

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