てんかんに関連した精神病症状
てんかんに伴う精神病症状の大半は、以下の2つになります。
①発作後精神病
②発作間欠期精神病
発作後精神病
側頭葉てんかんなどの部分てんかんに多く、二次性全般化発作や複雑部分発作の後に出現する急性精神病状態のことです。躁状態やいらだち、攻撃性、粗暴性などを認めることもあります。持続時間としては、通常は1週間前後。軽躁状態で睡眠の安定のための薬剤調整を行うことで、精神病状態になることを防ぐことができます。また、複雑部分発作や全般化発作の予防が精神病状態の予防にも繋がります。
→ 1-2日の軽躁状態
→ 興奮、混乱状態
発作間欠期精神病(交代性精神病を含む)
強い情動を伴う妄想性の精神病で、シュナイダーの1級症状を呈することもあります。統合失調症と異なり感情は保たれる点は鑑別点となるでしょう。交代性精神病については、発作が抑制されるのと交代するように出現する精神病状態のことを指します。
・持続時間としては月単位が多い
・自然には軽快せず、薬剤調整が必要
てんかんに伴う精神病症状への治療
・精神病症状の原因と思われる
抗てんかん薬があれば減量中止
・精神病症状の改善後、
抗精神病薬の減量は慎重に行う
・精神病症状の持続の長い例では、
完全寛解から1-2ヶ月後に漸減する
・発作後精神病の場合…
発作群発後の意識清明期または
精神病症状出現前の躁状態の際に、
ベンゾジアゼピンまたは
鎮静作用のある抗精神病薬を投与
てんかん精神病と統合失調症の鑑別
てんかん精神病と統合失調症を鑑別する臨床的特徴
発作時の精神症状
・前兆(aura)としての恐怖や不安
・気分障害(15%)
・離人症や現実感喪失
・意識の変動
・妄想や幻覚は稀
発作後精神病
★てんかんの診断後、10-20年後に発症
・発作後8-72時間程度の清明期を認める
・妄想は誇大的、宗教的、身体的なものが一般的
・幻視または幻聴
・洞察力は保持される
・強い情動変化
・意識混濁を伴うことあり
・記憶の欠落を伴うことあり
発作間欠期精神病
★てんかんの診断後、10-15年後に発症
・妄想は関係妄想、妄想知覚、被害妄想が一般的
・神秘的体験
・幻視または幻聴
・命令性幻聴は稀
・感情は保持されている
・病前性格が保たれている
・陰性症状は少ない
・意識は清明
統合失調症
・作為体験や被害妄想
・幻聴は三人称または命令性
・陰性症状
・感情鈍麻
・前駆期の存在
・年齢が若い
・洞察力の欠如
・発作との関連はない
▶︎引用:Ther Adv Neurol Disord.2012 Nov;5(6):321-34
前兆(aura)と前駆症状
前兆(aura)=単純部分発作
前兆(aura)は部分発作の始まりに出現する様々な自覚症状のことで、二次性全般化あるいは意識消失に先行して現れるものを指します。つまり、「前兆」は単純部分発作そのものなのです。前兆だけで終了すれば単純部分発作であり、意識消失を伴えば複雑部分発作、全身痙攣に移行すれば二次性全般化発作です。
・腹部の違和感
お腹からこみ上げてくる感じ
・物が歪んで見える
・視界の中に光るものが見える
・音が変に聞こえる
・嫌なにおいがする
・恐怖感や不安が強まる
これらの前兆が増えてきた場合は、より強い発作が生じるリスクがあり、前兆の増減は治療評価の指標となります。
前駆症状
これは前兆とは異なります。前兆が単純部分発作であるのに対して、前駆症状は強直間代発作や二次性全般化など強い発作に先行してみられる心身の不調のことを指します。この前駆症状は発作の起こる数時間〜数日前頃に生じ、発作とともに消失します。知的障害患者などの場合、発作前にいらだちが生じ、発作後に情動が安定するというパターンを呈することもあります。
まとめ
てんかんに関連した精神病症状についてまとめてみました。てんかんに関連した精神病症状は発作後や発作間欠期に生じることが大半で、発作を軽減させるための抗てんかん薬の調整、あるいは精神病症状を誘発している抗てんかん薬の漸減中止、症状に対する抗精神病薬の追加、睡眠薬の追加などが必要となります。また、精神病症状とは異なりますが、前兆としての身体愁訴や恐怖,不安感、前駆症状としての心身の不調などを呈することもあります。てんかん患者を診察する場合、様々な患者さんの訴えに耳を傾け、適切な対処ができるように努めたいですね。
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