【まとめ】抗精神病薬でのコリン離脱(コリンリバウンド)【減量スピードに注意!】

コリン離脱/コリンリバウンド

抗精神病薬でのコリン離脱

アセチルコリンとは

まずはアセチルコリンが何か、というところから整理をしていきましょう。アセチルコリンとは、「コリンと酢酸のエステル化合物」であり、「神経伝達物質のひとつ」になります。末梢神経の神経筋接合部、交感神経および副交感神経終末などにおいて作用しています。

アセチルコリンの合成→代謝→分解

アセチルコリンは細胞質において合成され、シナプス小胞に輸送→エクストーシスにより細胞外へ放出(細胞内でのカルシウムイオンの上昇が必要)という経路をたどります。細胞外に放出されたアセチルコリンは、アセチルコリンエステラーゼによって非常に短時間のうちに分解され、コリンと酢酸となります。なお、ブチルコリンエステラーゼもアセチルコリンの分解に働きます。分解されたコリンはコリントランスポーターによってシナプス前終末に取り込まれることとなります。

アセチルコリンの作用

アセチルコリンの受容体として、ニコチン性アセチルコリン受容体ムスカリン性アセチルコリン受容体の2つがあります。ニコチン性アセチルコリン受容体では、ニコチン様作用を、ムスカリン性アセチルコリン受容体ではムスカリン様作用を担います。

ニコチン様作用

ニコチン受容体の分布Nn受容体:自律神経節、副腎髄質
Nm受容体:神経接合部

自律神経節においてNn受容体が刺激されるとアセチルコリンやノルアドレナリンが遊離されます。副腎髄質においてはNn受容体が刺激されるとノルアドレナリン、アドレナリンが遊離される。神経接合部においてNm受容体が刺激されると骨格筋が収縮されます。

ムスカリン様作用

M1〜M5受容体のサブタイプに分けられます。ただし、このうちM4、M5の生理機能はまだ十分に解明されていないため、主に3つのサブタイプについてまとめていきましょう。

ムスカリン受容体の分布M1:大脳皮質や海馬
M2:心臓
M3:瞳孔、気管支、腸管、膀胱など

M1受容体は大脳皮質や海馬に多く存在し、記憶や学習に関与していると考えられています。M2は心臓などに存在し、受容体刺激によって心臓機能の抑制に働きますM3受容体は上記のような末梢臓器の広く存在し、受容体刺激によって、縮瞳や気管支収縮、腸管収縮、膀胱収縮などを生じさせるのです

コリン離脱の機序

いわゆるMARTAと呼ばれる抗精神病薬の中には抗コリン作用の強い薬剤が存在します。特にオランザピンやクエチアピン、クロザピンは抗コリン作用が強いと言われています。これらの薬剤では、抗コリン作用に伴う便秘や口渇、排尿障害などが生じやすいことに注意が必要です。また、長期的に抗コリン作用のある薬剤を使用している場合、薬剤を急に減量・中止した際にコリン離脱(コリンリバウンド)を生じることがあります

コリン離脱の作用機序としては、抗コリン薬によって抑え込まれていたアセチルコリンが急に解放されることで、リバウンドによりアセチルコリンの活動が一気に強まってしまうというものです。そのため、抗コリン作用が強い薬剤の減量は少しずつ慎重に行うことが望ましいのです

コリン離脱の症状

アセチルコリンは副交感神経を調整する薬剤であり、この作用が一気に強まることで、消化器症状(嘔気、腹痛、下痢)、不眠や頭痛、不安焦燥、いらだちなどの症状がみられます。なお、不眠が認められる理由として、アセチルコリンには覚醒作用があるためであり、抗コリン薬で眠気が生じるのはこのためです。コリン離脱の症状は、薬剤を減量して1~3日後あたりに認められることが多く、1-2週間かけて徐々におさまっていくことが多いです。もし抗コリン作用を有する薬剤の減量過程でコリン離脱症状を生じた場合は、薬剤の減量を中止して一旦は元の量に戻すなどの配慮が必要です。そのような患者の場合、次回より減量する際にはより緩徐に、より少量ずつ漸減していくことが望ましいと言えるでしょう。

参考(抗コリン薬と認知症)

抗コリン薬を長期間内服していると、認知症のリスクが高まったという報告があります(抗コリン薬を3年間以上服薬することで認知症リスクは1.5倍となる)。漫然と抗コリン薬を使用しないように注意したいですね。

【論文】JAMA Intern Med.2015 Mar;175(3):401-7

コメント

タイトルとURLをコピーしました