レビー小体型認知症におけるミオクローヌスについて

精神科医療

ミオクローヌスとは

ミオクローヌスとは不随意運動のひとつで、突然の短時間の筋収縮によって身体がビクッと動くというものです。ミオクローヌスは健常人にも起こることは珍しくありません。例えば皆さんも経験があると思いますが、眠たくなると手や足などの身体の一部がビクッとなることってありますよね。あれもミオクローヌスなのです。ただし、ミオクローヌスはパーキンソン病やてんかん、亜急性硬化性全脳炎、てんかん、肝不全、低血糖、頭部外傷、クロイツフェルトヤコブ病、ミトコンドリア脳筋症、など特定の疾患によって引き起こされることもあります。そのため、ミオクローヌスがあまりにも目立つような場合には精査が必要となります。今回は、レビー小体型認知症でもミオクローヌスが生じることはよくあるのか、という疑問が生じたため、調べてみることとしました。

羽ばたき振戦ちなみに、医学生であれば誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、肝不全などでみられる「羽ばたき振戦」というものがあります。これは陰性ミオクローヌスと呼ばれ、手関節を背屈させて手指を伸展させると間欠的な脱力が生じます。

レビー小体型認知症でのミオクローヌス

▶︎明日の臨床Vol.28 No.1 レビー小体型認知症の診断と治療
▶︎Jpn J Psychosom Med 60:315-320,2020 パーキンソン病とレビー小体型認知症

などによると、パーキンソン病と比べた際のレビー小体型認知症(DLB)でのパーキンソニズムの特徴として、

DLBのパーキンソニズム①安静時振戦が少ない
②左右差が少ない
③L-dopaへの反応性が乏しい

が挙げられています。

加えて、「DLBではしばしばミオクローヌスが認められる」との記載もみられました。

DLBではパーキンソニズムや起立性低血圧などが目立つことがあるため、転倒リスクは高くなってしまいます。ミオクローヌスが下肢に生じた際にはこちらも転倒リスクにはつながりやすいため注意が必要です。なお、レビー小体型認知症でのパーキンソニズムなどの運動障害には、近年ゾニサミド(トレリーフ)が保険適応となっています。ゾニサミドの効果を示す論文も以下に紹介していきましょう。

レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミドの有効性

内容論文:
J Alzheimers Dis.2021;79(2):627-637.
Efficacy and Safety of Zonisamide in Dementia with Lewy Bodies Patients with Parkinsonism: A Post Hoc Analysis of Two Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trials

背景:
ゾニサミドがレビー小体型認知症患者のパーキンソニズムを改善することは、国内で実施された過去の第Ⅱ相および第Ⅲ相臨床試験で確認されているが、試験間で有効性の結果に差異が見られたため、本試験ではゾニサミドの有効性を確認した。

目的:
我々は、過去の第II相および第III相臨床試験のプールデータのポストホック解析において、パーキンソニズムを有するDLB患者におけるゾニサミドの有効性と安全性をさらに検討することを目的とした。

方法:
両試験とも4週間のrun-in periodに続き、12週間の治療期間を設けた二重盲検プラセボ対照並行群間無作為化多施設共同試験デザインである。プール解析では、主要評価項目は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)パートIIIの総得点の変化とした。その他のアウトカムとして、Mini-Mental State Examination(MMSE)およびNeuropsychiatric Inventory-10(NPI-10)スコアの変化、および有害事象の発生率も評価した。

結果:
ゾニサミドは12週目にUPDRS part IIIの総合得点と個々の運動症状の得点を有意に減少させたが、MMSEとNPI-10の得点には影響を与えなかった。有害事象の発現率は、食欲減退がプラセボに比べゾニサミド50mg群で高かった以外は、ゾニサミド群とプラセボ群に差はなかった。

結論:
ゾニサミドは認知機能の悪化や認知症の行動・心理症状の悪化をさせることなく、DLBのパーキンソニズムを改善することが示された。

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